VR(バーチャルリアリティー)でどのようなプレゼンテーションが行えるのか。まずは、改めてイークラフト事業内容のご説明と、VRの事例を2点ご紹介します。
株式会社イークラフトは、福岡に本社がありまして、僕は東京でVRソリューションの開発と、 3DCGデザインや、 3Dに関するコンサルティングを行っております。
まず、核となる事業が「ランドスケープデザイン」です。
ランドスケープデザインはミドリの設計です。このようにミドリがたくさんの空間設計を行います。
主に公園などのパブリックスペースのデザインになります。
「 3DCGパース」や、アニメーションもひととおり請け負います。
ビジュアライゼイション前提のパースも作らなくもないですが、(*樹木がたくさんのパースとかだったらまだしも、屋内空間だったらパース屋とは勝負できないなぁと思います。GIに頼ってそれっぽくして素人目はごまかせても。)
基本的なスタンスとしては、VRの品質でご満足頂けない場合に 3DCGソフトウェアで画像を作成します。(*VRはビジュアライゼイションとは違うので、僕は描画品質がイマイチだろうと気にはしてません。ベイクマップなどで室内空間はラジオシティー風で格好良く演出はできますが、広大な屋外空間だとちょっと大変。だから、僕らのVRは影を落とさないそこそこのクオリティー。)
樹木に関しては、特にこだわりがあります。パースにしてもVRにしても、添景で済ませるような二次元的なモノは使いません。三次元でモデリングした樹木を使います。この画像はすべて「松」ですが、複雑な表情が出るようすべて異なる形状をしています。「ミドリをポリゴンに」がテーマです。
そしてなによりも、イークラフトの「VRソリューション」です。
「ソラ」です。イークラフト独自のVRソリューションを SOLAと名付け、幾つかの製品の開発・販売や、サービスを提供しています。SOLAについては、後ほどの事例を通してご説明させていただきます。
最後に、「WEBコンテンツ」の制作も行います。
社員が運営するサイトのデザインももちろん自らによるもので、なかでも「SOLA Blog」(ご存じの方もいらっしゃると思いますが、)はVR系のネタをお探しの方にはお奨めです。(*他には、三次造建はビジュアライゼイションの最前線を紹介するサイト。shockwave gamesはブラウザで遊べる 3Dゲームの紹介サイトです。そして、ランドスケープ ブログ。更新は滞っていますが。。デザインは一番良い出来だと思うけど。)
それでは、VRの事例を2点ご紹介します。
まず、「CG歴1ヶ月」で作ったVRコンテンツをご紹介します。
これは、「 3DCGを始めて1ヶ月の方々が作ったウォークスルーコンテンツ」です。そう、驚くべきはなんと 3DCG歴1ヶ月。これは僕が作ったコンテンツではありません。僕が 3Dのコンサルティングを行った会社のコンテンツです。 3Dとは何だ?から始め、 3Dソフトの選定を行い、そして、 3Dソフト習得のお手伝いをし、その過程で出来たコンテンツです。
コンテンツは、SOLA PEで作成しました。ウォークスルーと画角の変更、計画案の切り替えが行えるシンプルなインターフェースです。そして、ウォークスルーを行い、現況はどうなってる?計画案はどうだ?などの検討を行ったようです。 僕は、 3Dに関する知識と SOLAを提供しただけです。 3DCGを使い始めて1ヶ月の方々が、自身で作ったコンテンツをご紹介します。
それでは、実際にコンテンツを操作してみます。
-- DEMO要点
クライアントとコミュニケーションを図り、設計の意図を充分に使えことが重要。そのためのVRです。幸いなことに、VRのための 3DCGには、ビジュアライゼイションほどのスキルは必要ありません。「CG歴1ヶ月」程度の技量であっても、VRであればパース以上の成果を得ることができるのです。
如何でしたでしょうか。「 3DCG歴1ヶ月で作ったVR」コンテンツをご紹介しました。
ふたつめの事例をご紹介します。VRはまさに「設計ツール」だという事例です。
2005年9月に福岡で開催された、全国都市緑化フェア「アイランド花どんたく」です。設計自体は2年前に終わっているので、古い事例となるのですが。イークラフトのワークフロー、VRに対する考えを分かりやすくお伝えできる事例ですのでご紹介いたします。そう、この事例では「ビジュアライゼイションではない、まさに設計ツールとしてVRを活用」しました。
このプロジェクトでは、VRソリューションに SOLA 4を採用しました。
まず、このVRの全体像をスライドでご紹介します。これは、SOLA 4の画面になります。 フェア会場の平面図です。
フェア会場を俯瞰したところです。
正面ゲート、福岡なのではということで、山笠が置かれています。(*と思います。)
メインの会場。(*有名な建築家の作品だと思います。。。)
会場中央の広場にある、テントや屋台。
いろんなコンセプトで植栽されています。(*和風?。)
(*アジア風?。)
やはり花がメインです。
大きな池。
この緑化フェアの設計は複数企業による、プロジェクトチームです。「企業間におけるさまざまな違い」が問題になりますが、SOLAで解決しました。
ひとつに「ソフトウェア」、CADソフトにしても 3DCGソフトにしても、使用するアプリケーションが揃うことはありませんでした。そこで、「さまざまなデータを三次元化し SOLAにデータを入力して」情報をまとめることにしました。 ふたつめに「プラットフォーム」。WindowsとMacが混合した環境で作業が行われましたが、SOLAのVRは Windowsでも Macでも観覧できます。 最後に「デザイン言語」。建築と造園とは、図面の書式が異なったり、不慣れなためか読み取るのが大変なこともあります。しかし VRはまさに共通言語です。
プロジェクトチームは、SOLAを使用することで情報と認識の共有を図ることができました。
少ない予算の中で、そしてプレゼンテーションの機会が多かったこのプロジェクトで、経済設計を行うために「ワークフローを改善」する必要がありました。
従来のワークフローはこうでした。「設計を行い図面」を作成。図面を元に「パース」を作って、「プレゼンテーションのためにVR」を用意する。プレゼンにおいて修正があると、図面を書き直すところからはじめる。プレゼンが多いこのプロジェクトでは、これは大きなロスになります。
そこで、新しいワークフローではまず「VR」から始めました。
アイデアやイメージが浮かべば「スケッチ」から、
すぐに「三次元化しVR」に入力。
そして、VRの中で「設計」を行いながら、そのまま「プレゼンテーション」を行う。
VRの中で、樹木などの植栽設計。設計しながらプレゼン、プレゼンしながら修正、そして、計画が進むに連れてデザインの精度を上げていく、の繰り返しでした。
必要になれば、VRのデータを元に「図面やパース」を作成する。非常に効率的なワークフローでした。
それでは、デモンストレーションを行います。今回お見せするのは計画中期のファイルです。
それぞれの建造物や植栽にしても担当した会社が異なる。設計中期のVRではスケッチ程度やほぼ完成のデザインまで混在している。
3DオペレータがこのVRを作ったのではないというのがとても重要なこと。植栽は設計士がこのVR上で植えて設計。
自然を三次元化するのはとても難しい。だけどVRではビジュアライゼイションのようにリアルを目指す必要もない。このVRではイメージしやすいよう、花は色彩を強調したアニメ風の表現。
大きな山から、テーブル上の鍋まで。ひとつの3Dシーンの中でこんなにも広い幅で再現し、自由に行き来できるのはVRならでは。
たとえば単調なデザインにならないよう、樹木の幹や枝を通して池や建物を見せる部分も必要。どの程度の枝振りの樹木を、何本植えたら、どんな景観の変化が生まれるのか。そして、池までの奥行きを感じさせ、実際の空間より広く見せることが出来るか。この感覚、樹木一本一本のボリューム感もそうだし、モノとモノの間に出来る空間のボリューム感。この繊細な感覚を伝えること感じ取ることが、景観シミュレーションでは大事。
如何でしたか。 参考に計画中のVR画像と、現場写真の比較をご覧頂きます。こちらは、SOLAのVR画像です。
こちらが現場の写真になります。
-- 複数枚スライド省略
この時期から、イークラフトの設計スタイルは変わっていきました。VRを単なるプレゼンテーション手法という位置づけではなく、設計の意図をクライアントに伝え、そのフィードバックを設計に活かすためのツール、コミュニケーションを図るためのツール。設計士が設計するためのツール。活用法はさまざまですが、すべての業務はVR中心の設計スタイルで行っています。 そう、「設計ツールとしてVR」を活用するというのが、イークラフトの姿勢です。 今後、ビジュアライゼイションとは大きく違う、別の方向性を持った3DCGの在り方がVRではないかと、僕は思います。
「VRでどんなプレゼンが行えるのか」という語りで、話を始めました。しかし、「プレゼンのため」のインタラクティブな手法だけがVRではなく。そして、パースやムービーなど「ビジュアライゼイション」の代わりがVRでもありません。
「より良い設計のために」VRです。 僕たちは「より良い設計のために」、VRをもっと上手く、もっと身近で活用すべきではないかと思います。「より良い設計のために」こそ、VRが必要なのだと僕は思います。(*たまたま僕らのランドスケープでは設計を表現するのに、VRがベストでした。とはいえ、内観ではビジュアライゼイションのほうがまだまだ効果的なような気がしますし、ショールームがもっとも体感できる最前の手法だと素人ながら思います。現実で再現できないことの方が、バーチャルリアリティーとしての成果があるのは間違いないですよね。だから一般的には、都市計画>道路?>ランドスケープ>集合建築施設>内観>プロダクト みたいな。ただどの分野に置いてもVRが未来へと続く手法なのは確か。なんといっても物理的な問題を解決してるれるわけですから。)